人は比較をする生き物です。そういう設計がなされています。
人が比較する理由は、
① 生存判断
・自分は群れの中で安全か
・食料、立場、力関係はどうか
・危険人物はだれか
→生き残るために必要な判断材料を得るため
② 正解を知る
・自分で判断するより他人を基準にした方が楽
・不確実性が嫌い
→思考を省エネするため
③ 物差しが必要
・良し悪しが分からないと不安
・比べて満足感を得たい
・比べて危険を回避したい
→基準を得るため
など。これらがあることで生き残る確率が上がるんです。
しかし、ここ数十年。SNSでよく聞くのが、
「他人と比較しなくていい。昨日の自分と比較しよう。」
という言葉です。
聞いたことがある人はたくさんいるでしょうし、それが正しいと思っている人も多いと思います。
即刻忘れてください。
この言説は間違っています。
ホントに、「他人と比較しなくていいんだよ。」と言い始めたやつをぶん殴ってやりたいくらい間違ってます。
確かに耳触りはいいんですよ。安心できるし、自己否定することも減ります。
今回の記事では、
・なぜ他人と比較しない方がいい、と言われ始めたのか?
・なぜ他人と比較した方がいいのか?
・間違った比較と正しい比較
について解説してきますね。
なぜ他人と比較しない方がいい、と言われ始めたのか?
「他人と比較しなくていいよ。」
「人は人、自分は自分だよ。」
「過去の自分と比較しよう。」
SNSではこういった耳触りの良い言葉をよく聞きますよね。
このスタンスが生まれた理由はとてもシンプルで、他人と比較すると、
・劣等感を感じて落ち込むか
・優越感に浸って調子に乗るか
みんな決まってこのどちらかに陥るからです。
自分より優れた人と比較して劣等感を感じて、病んで動けなくなったり、自分より劣った人と比較して優越感に浸って、サボって足元を掬われる。
そういう人があまりにも多発してしまっています。
その結果、こういう人を生み出している元凶である「他人との比較」が悪者扱いされて、「だったらやらない方がいい」という流れになっていったんですよ。
他人と比較しなければ劣等感も優越感も感じませんから。でも比較しないと良し悪しが分からないので、代わりに「昨日の自分より」という、過去の自分という比較対象にすり替えたわけです。
ですが、他人との比較が劣等感や優越感を生む元凶だったからといって、それを悪者とするのは非常に愚かです。
これ言ってしまえば、「包丁を扱うと怪我するから、包丁は使ってはいけない」「車に乗ると事故を起こしてしまうから、車に乗ってはいけない」と言っているようなものなんですよね。
でも、世の中はそんなことにはなっていません。世界では毎日数億人の人が包丁を使い、数十億人の人が車に乗っています。「危ないから使わないようにしよう」としている方が少数派です。
「他人との比較」という事象も同じように扱うべきなんですよ。
間違った比較をやめて、正しい比較をしましょう。
それだけの話なんです。
なぜ他人と比較した方がいいのか?
他人と比較する1番の理由は「自分の現在地を知るため」です。
周りとの比較で足が速いことを知り
周りとの比較で太っていることを知り
周りとの比較でセンスがないことを知る
自分は足が速いのか、太っているのか、センスがあるのかは、「それを比べる誰か」がいないと判断できません。
自分の現在地を理解するからこそ、今自分が何をすべきかが分かるんですよ。比較をしないと目の前の現実を正しく見ることができないんです。
もちろん他者との関わりが一切ない断絶された島で、自給自足でひとりで生きてるんだとしたら、他人と比較する必要は全くありません。好き勝手に生きればいいです。
しかし僕らは社会的動物であり、他者と密接に関わりながら生きていますし、これからもそう生きていかざるを得ません。
となると、「他人と生きていくための術」が必要になるんですが、これが「比較」によってでしか手に入れられないんですよ。
さらには、自分のことを理解するためには必ず他人と比較しなければなりません。
自分は身長が高いのかどうか
自分は仕事ができるのかどうか
自分が作ったご飯は美味しいのかどうか
こういったことは自分以外の誰かと比較して初めて判断できます。
人は意味や価値を求めますから、自分の価値を高めていかないと社会で上手く生きていくことはできません。
自分の価値を高めるためには、自分の価値をちゃんと理解して、悪い部分を減らす、良い部分を増やすといった対策を立てないといけません。
つまり、
比較をしないと「自分」が分からない
比較をしないと「基準」が分からない
比較をしないと「現在地」が分からない
だからこそ、他人との比較を避けてはいけないんです。むしろ積極的に他人と比較することで、自分を知り、基準を知り、現在地を知り、今の思考と行動を練り出すことが大事なんです。
「過去の自分」との比較の落とし穴
「過去の自分と比較すればいいじゃん。」と思われるかもしれませんが、そこには意外と軽く見られている落とし穴があります。
先ほども書きましたが、僕らは社会的動物であり、他人との関わりの中で生きていますよね。特に仕事や交友関係において、すべての人は「自分にとって価値の高い人と関わる」という選択をしています。
つまり、関係性を築く、維持する上で「どの人が自分にとって価値の高い人なのか?」を意識的だろうと無意識だろうと、必ず見定めているんです。
仕事もそうですよね。成果を上げる人は会社から大事にされますし、成果を上げない人は大事にしません。
となると、どうしても人間社会では「他人との比較を前提とした関係性」で成り立っていることになります。
となったときに、もしもあなたが「去年の私はほふく前進だったけど、今年の私はハイハイくらいには早くなった!成長だ!」と喜んでいる間に、周りの人は歩いたり走ったりしていたら、どうなりますか?
どんどん周りとの差は開き置いていかれますよね。
となると、あなたに価値を感じてくれる人は必然的に減っていくことになります。
それでもあなたは「昨日の私より成長してるから問題ない」と、胸を張って言えるんですか?という話なんです。
この人間社会で生き続ける限り、あなたは死ぬまで他人と比較されますし、その比較によって関係性が変化していきます。
社会はあなたの「自分のペース」を許容してはくれますが、採用するかどうかは別です。他者から価値を見出してもらえない人は、この社会で満足のいく生き方をすることはできないんです。
間違った比較と正しい比較
他人との比較はとても大切ですし、そもそも他人と比較しない、なんて不可能です。
・イケメンですね!
・美味しいですね!
・身長高いですね!
・優秀ですね!
・大きいですね!
・早いですね!
みなさん、息を吐くようにこういった言葉を使っていると思いますが、これらはすべて「他人と他人を比較した上での発言」ですよね。
あなたは誰かよりイケメン、何かより美味しい、誰かより身長が高い、誰かより優秀、誰かより大きい、誰かより早い、ってことですから。
この社会は比較によって成り立っているので、自他比較、他他比較はして当たり前です。いいんですそれで。
問題なのは、比較の「使い方」です。
まず間違った比較を紹介すると、
① 比較結果を感情的に捉える
② 比較対象を間違える
③ 自分基準で他人を判断する
④ 評価、優劣の基準で生きている
⑤ 他人軸で生きている
①
比較した結果に対して感情的に捉えるから、劣等感や優越感が生まれてしまうんですよね。これを辞めてください。
②
コーチング歴数ヶ月の人が、コーチング歴10年の人と比較する、というのはよくあるパターンです。そりゃ劣等感に苛まれるだけです。
③
人はみな自分が正しいと勘違いしているので、自分の基準が正しいと捉えがち。その結果、自分と違う人を見ると「あの人は間違ってる」と判断してしまうんですよね。
④
評価されたい、価値がないといけない、という基準に囚われていると、他人との比較がしんどくなります。
⑤
これは日本人に多いですね。他人軸で生きていると自己犠牲や我慢が当たり前になり、他人との比較が「自分を守るための基準探し」になるんですよね。
他人との比較をこれら5つのやり方でやっている人は、間違った方法なので改善してください。この方法でやるくらいなら、昨日の自分と比較した方がマシです。
逆に、正しい他人との比較で大事なのは
① 批評ではなく観察として使う
② 同じ条件の他人を対象にする
③ 本人の基準で本人を判断する
④ 現在地を把握するために使う
⑤ あくまでも自分軸を優先する
①
批評として比較しようとするから感情が生まれたり、軋轢が生まれるんです。そうではなく「あっ、こうなんだな」という観察手段として、他人と比較してください。
②
比較の前提は「条件を揃えること」です。コーチング歴数ヶ月なら、コーチング歴10年目の人の「歴数ヶ月の時代」と比較してください。
③
人には人の基準があります。自分の基準で他人を判断せず、まずは他人の基準を理解しようとしてください。人の行動には必ず理由があるので、相手の基準を理解すれば相手の行動も理解できるようにあります。その上で、自分基準と比べて行動を決めてください。
④
他人との比較は自分を客観視するために必ず必要なものです。病まず、悦に浸らず、把握するために理性的に捉えてください。
⑤
すべての人は、誰かと比べて秀でていることもあれば、劣っていることもあります。僕は野球や努力、身体操作はイチローよりも格段に劣っていますが、服のセンスや身長はイチローよりも秀でています。でも、比較したからどうだって話で。「自分はどうありたいの?」という軸に基づいて行動を決めるのが一番大切です。
他人との比較は大切であり、絶対に必要です。
ただし、やり方は間違えないでください。
正しい比較をたくさんしましょう。
間違った比較は早くやめましょう。
他人と上手に比較して、どんどん結果を出していってください。
